植物が、水を必要とすることは改めていうこともないでしょう。雨の少ない砂漠には植物が育ちません。日本に緑が多いのは、雨量がじゅうぶんにあるからです。
なぜ、植物は水を必要とする?
答えの一つは、食糧だからです。植物は、水と二酸化炭素CO2を原料に太陽エネルギーを使って有機物を作り出す。つまり水は植物の大切な食糧の一つです。
しかし、それ以上に大切な役割があります。それは動物でいえば血液の役割であり、体温調節の働きであり、体を支える骨の代わりです。多面的な役割ですが、話は一つにつながっていきます。
今日の話は、この後者の「
植物と水」についてです。
上の写真は、私がベランダで育てているブルーベリー、今年もたくさん実をつけてくれました。
そのブルーベリーのシュート(新枝)が水不足でしおれ始めています。
これが、私の水やりのタイミングのサインです。
水やりをした半日後くらいには、こんなに元気になりました。
さて、水をやらないとシュートはなぜしおれたのでしょうか。それは、シュートの先のまだ木質化していないところの細胞から水分が失われたからです。細胞という水袋から水が抜けてしぼんだからです。
それでは、なぜ水分が失われた? 蒸散したからです。植物の葉っぱには気孔といって目には見えないですが無数の穴があいています。そこから盛んに水を蒸発させます。
そんなに蒸散などさせなければ、しおれることもないのに?! なぜ蒸散などをする? 実は、植物は根から吸った水のうち90%以上を蒸散で失うといいます。
光合成で食糧として使う水は僅かで根で吸った水の大半を捨てている。なんでそんな無駄なことをしている?
しかしあにはからんや、これは無駄に捨てているのではなく、植物の大事な水の使用法なのです。
植物は一度根を下ろすとそこから動けません。夏の炎天下、動物なら動いて日陰を捜したり、水浴びなどでしのぎます。植物はギラギラ照りつける炎天下でもじっと耐えます。まずは、それが可能なのは、蒸散のおかげ、蒸散による気化熱で体温を下げています。
そして、それ以上に大切なのは、血液の代わり。動物は血液があって、それに胃腸で消化吸収した養分を溶かし込み全身に運びます。一方、植物は血液がありませんから根で吸収した窒素、ミネラルなどの養分を水に溶かし込んで運びます。
この血液の話にからんで、動物では心臓ポンプで血液を全身に回しますが、心臓を持たない植物は、養分を溶かした水をどのようにして送るのでしょうか? しかも最大の動物がシロナガスクジラ、その大きいもので体長30m余、体重150トン余に対し、最大の植物は例えば、アメリカ西海岸のセコイヤという木では樹高110m余、重量約2000トン、心臓なくして、どうしてこんな巨大な全身に水を送るのでしょうか。110mといえば、10階以上のビルに相当、そこまで水を持ち上げるには、とんでもない心臓の力を必要とします。
これにも、蒸散が大きな役割をしています。本当のところは、その謎は完全には解明されていないようですが、三つの力が働いているといいます。根が水を吸収する力(根圧という)、水の通る管(導管という)の中での水の凝集力(途切れないとする力)、そしてこの蒸散の力です。その中でも蒸散によって生じる陰圧が最も大きいといいます。つまりは、蒸散させることによって生じる陰圧によって水を100m余までひきあげるのです。さらにいえば、この蒸散の力によって養分を溶かし込んだ水が葉っぱの先々まで回ることで植物は生きていけるのです。
最後に、骨の役割ですが、樹木は動物の骨の代わりに強い木質を発達させ代用していますが、草や、木の新芽、葉っぱなどには木質がありません。それは、細胞が水を吸ってパンパンに張り、その力(膨圧という)によって、ようやくすっくと立っていられます。だから細胞から水分が減るとしおれるのです。
上の写真のブルーベリーの水やり前、後を見ればよく解るでしょう。