まえに、「『山で方角がわからなくなったら、木の切り株をみて、年輪のひろい方が南』の言い伝えは嘘」について書きましたが、キノコの食毒判定の言い伝えの嘘についても、とり上げておきましょう。
切り株より、こちらの方が、場合によっては、即、死や、死の苦しみにあう恐れがつよい。
言い伝え七つの嘘
嘘1-「縦にさけるキノコは食べられる」
嘘2-「毒キノコは色が派手」
嘘3-「においのよいキノコは食べられる」
嘘4-「虫が食べているキノコは人間も食べられる」
嘘5-「どんな毒キノコでも塩漬けして毒抜きすれば食べられる」
嘘6-「ナスと一緒に食べれば中毒しない」
嘘7-「銀のスプーンが変色しなければ食べられる」
私が、これまで出会ったキノコを中心に、嘘をあばきましょう。
嘘1-「縦にさけるキノコは食べられる」
なるほど、マツタケやシイタケは、柄がタテにさける。焼きマツタケでおなじみ。
しかし、だからといって、タテにさけるからすべて食べられるわけではありません。
もっとも多い中毒例のクサウラベニタケや、ツキヨタケも簡単にタテにさけます。ツキヨタケの見分け方は、柄をタテにさいて、傘のつけ根に黒いシミがあるので簡単にわかります。
逆に、チチタケなどタテにさけない食菌は、いくらでもあります。
クサウラベニタケ
ツキヨタケ
嘘2-「毒キノコは色が派手」
これも、真っ赤な嘘。上の二つは、褐色~灰色のじみな色
。「殺しの天使」ドクツルタケは、純白。
日本にある毒キノコで、色が派手なのは、
ベニテングタケだけ。
反対に、この派手な
タマゴタケは、食菌
嘘3-「においのよいキノコは食べられる」
キノコで、万人が、「いいにおい」というのは、マツタケくらいなもの(それも、日本人だけ。他国人は、いやなにおいだという?! 現地では、あまり食べないからカナダ、中国、韓国などから入ってくる)。老熟したものをのぞいて、ほとんどの毒キノコは、特別なにおいをもたない。反対に、強烈なにおいの
キヌガサタケなどは、食菌。
嘘4-「虫が食べているキノコは人間も食べられる」
ちょっと、写真はありませんが、毒キノコで虫食いのものはいくらでもあります。「蓼食う虫もすきずき」ではありませんが、虫と人間では、食べて無毒化するためにもっている酵素がぜんぜんちがいます。私たちがかぶれるウルシなども平気で食べる虫がいるように。
嘘5-「どんな毒キノコでも塩漬けして毒抜きすれば食べられる」
本当かどうか、確認はとれていませんが、長野県のあるところでは、
ベニテングタケを塩漬けして食べるといいます。たしかに塩で毒抜きすれば、食べれるものもあります。
しかし、もっともこわい
クサウラベニタケや
ドクツルタケは、煮ても焼いても塩漬けしても、けっして毒抜きはできません。
嘘6-「ナスと一緒に食べれば中毒しない」
嘘7-「銀のスプーンが変色しなければ食べられる」
この二つは、専門家も、どこから、こんな言い伝えがでてきたのかわからないほど、根拠のない嘘だそうです。
ことほどさように、言い伝えは嘘が多い。こんなのがあるおかげで、苦しんだり、あえなくなったりした人も多いのではないでしょうか。
ほんとうに、中毒にならないためには、一つ一つ毒キノコをおぼえるほかはない、とのこと。
せいぜい、ご用心あれ。