「いくら資格をもっていても、勉強を怠れば、錆びるばかり」という殊勝な心がけから、15、16日は、「
全国森林インストラクター会研修会」、今回は、埼玉が舞台で全国の有志インストラクターが集まって勉強会を行いました。
ふだんはあまり見られない、体験できないメニューで行われました。皆さんにもおすそ分け。
7月15日 奥秩父中津川の
鉄砲堰見学と放流体験
昔、トラックなど陸上輸送手段がないとき、山奥で伐った木を都市まで運ぶのは大変でした。もっとも有効な手段は川を使って運ぶことでした。
といっても、山奥の谷川は水量も少なく、木材を流すにも流れません。
そこで必死で工夫をしました。それが、この鉄砲堰です。人工的な仮設ダムを造り、水を貯め、それを一気に決壊させ、その水の勢いと浮力を利用して、下流に木材を流すのです。全国でここにだけに再現された三つの鉄砲堰の一つです。
上の写真は、放流口に蓋をして水を貯め始めたところ。
一気に放流口を壊し、鉄砲水を放流したところ。実験のため水量は少ないですが、大迫力です。
こんな工夫をして、はるばる木材を送り、都市生活を支えたのです。細かくは説明しませんが、その工夫には驚くばかりです。
同じく、15日 荒川源流
・シオジ原生の森見学シオジ:もくせい科の高木 大きいものは、高さ30m、直径1.5mにもなる。建材、家具、スキー板、野球バットなどに用いられる優良材。特に、ときに現れる美しい杢・縮み杢は珍重されます。この一帯は、そのシオジが優先する、日本でも数少ない原生林。ここにあるシオジで縮み杢が出れば、一本一億円超? もちろん伐採はしませんが。
15日、三峰神社泊
16日早朝 雲海の向こうは、日光男体山です。下界の熱帯夜をよそに、標高1100mの三峰は爽快です。
三峰神社の拝殿前大杉。こんな立派なスギやヒノキの林立する神域は、私は見たことがありません。
16日 秩父神社にて、秩父神社宮司・薗田稔京都大学名誉教授の講演
『森に生きる日本文化』を聞く。秩父神社は、京都の祇園祭、飛騨の高山祭とともに三大曳山祭に数えられている、あの秩父夜祭で有名な、由緒ある神社です。
感銘深いお話でした。
日本の神(神道の神)は、世界で唯一、身を現さない神、自然の奥深くお隠れになって、恵みを与えてくれる神、日本人は、その神を敬い、拝跪することによって宗教感情を満たす。薗田宮司さえも、秩父神社のご神体そのものを見たことがないという。
神様を「一柱」、「一座」と呼ぶのも、それに関係する。神そのものを呼ぶのではなく、神がお座りになる(降臨する)
ところで、神さまを表現する。
いずれにせよ、自然、なかでも森があってはじめて日本の神は存在する。森が死ねば、神も死ぬ。神が死ねば、森も死ぬ。「自然との共生」が求められるこれからの時代に貴重な思想、宗教心情・・・。
浅薄ながら、私の理解でした。
16日
西川林業地見学
西川という地名があるわけではありません。入間川、高麗川などの流域を西川林業地と呼びます。江戸から見て、
西の方の
川から流されて木材が供給されたその産地だから西川林業地と呼ばれたのです。
「火事と喧嘩は江戸の華」、江戸は燃えやすい街でした。その大火のたびに復興の木材を供給したのが、この西川林業地なのです。
江戸の方向の空が火照ると、この時とばかりに木材を送り出したといいます。もちろん、それは、入間川や下流の荒川を使って、筏で流送したのです。
地元の林業家から、山を歩きながらお話を聞きました。