なんでもそれだけを見ているとあまりよくはわからないが、他のものと比較すると、その特徴がいっそう見えてくることがあります。
植物の特徴をよく知るには、動物との違いを見てみるのも一つの手です。
そのような意図からかかれている高橋英一著『
動物と植物はどこが違うか』(研成社、1989)をおもしろく読みました。
その本によると、植物と動物の違いは、すべてその食べ物が違うというというところからきているといいます。
それは、すでにどこかでお話した「独立栄養生物=植物」と「従属栄養生物=動物」の違いとも関係しますが、
植物は無機物を、動物は有機物を食料とする。より具体的にいえば、植物の食料は、太陽光、二酸化炭素、水、窒素、ミネラルであり、動物のそれは、他の生物の体をつくっている炭水化物やたんぱく質です。さらにいいかえれば、植物は有機物を合成し、動物は、その有機物を分解することによって生きている。
ここから、
形、色、機能などのすべての違いが生まれているといいます。
アカメガシワ ニホンカモシカ
たとえば、
形。
植物は、食べ物のなかに浸っている。体のまわりに陽光はあふれ、二酸化炭素も空気中に漂っている。水や養分も地中に根さえはれば、そこにあって吸収できる。ということから、体のつくりは、できるだけ外界に接する面積をひろげるよう開放的に、線(幹、根)や平面(葉)でできている。
一方、動物は、他の生き物をゲットし、口から食べて、胃や腸で消化しなければならない。だから動きやすく、食べ物を身体内部で消化しなければならないため、できるだけコンパクトな立体的なつくりになる。
そして
色。
植物の色は、太陽光を吸収するために、ほとんどが葉緑素の「緑」一色。一方、動物は、食べにくる敵から隠れたり、逆に目立って威嚇したり、あるいは、異性を呼びよせるために鳥たちのように鮮やかな彩り。(植物の色とりどりの花は、その動物をおびきよせるため)
最後の
動く動かないの機能も、そこから来ている。
植物は、食料がまわりに漂っていて「やってくる」ために、わざわざ動く必要がない。一方、動物は、食料をえるためには、他の生き物をさがし出し、食べなければならない。そのため視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器官、情報伝達器官としての神経系、そして動くための筋肉系が発達してきた。
私たちは、「動く」動物の方が発達していて「動かない」植物はおくれている、と、そう考えがちですが、それは違うようです。
植物は、動く必要がないから、動物のような機能が進化しなかっただけ。だって
植物は、待っていれば「向こうからやってくる」食料を、つまりは陽光や二酸化炭素を葉から、水や養分を根から、体の全面を使って取り込み、栄養をつくりだせばいいのだから。
他の生物を食べる(殺す)ことなく、みずから栄養をつくりだせる植物=独立栄養生物の方が、よりすすんでいる?
もっともマクロな視点でその違いを見ると、植物は合成(同化)し、動物は消化(異化)する。この正反対の営みで自然界のサイクルは回っており、これは、つまりは地球生態系の話になる。そのサイクルを円滑にまわすために、さらに、分解(還元)者として貢献しているのが、もう1グループの従属栄養生物=菌類なのです。