もう一度、大晦日に書いた
「菌類について」のフォロー。
地球上最大の生態系の一つ・森林に触れたところで
「地中には目に見えないが測り知れないほどの菌類がいる」という一行で済ませたが、その実態をもう少し詳しく。
「菌類」のかけがえのない働きがもっと見えてくる。
この落ち葉の下には、どんな世界が広がっているか? ここに、森林の1㎡の土壌中の生物を調べるというこれも気の遠くなるような作業をした研究者がいる。それは、「国際生物学計画」という研究プロジェクトでなされた。調べたのは、志賀高原のオオシラビソの森。
その結果によると土中動物では、線虫212万、ヒメミミズ13万、ダニ4万、トビムシ2万6千、コムカデ180というとんでもない数だった。彼らがまずは枯れた植物、落ち葉、動物死骸、排せつ物などのゴミ(リターという)を食べて噛み砕く。死んだ生き物を食べるからその食べ食べられる関係を腐食連鎖という。
これら地中動物が噛み砕いたとはいえ、まだそれは有機物のままだ。それが無機物にまで分解(還元)されないと生態系は回らない。 志賀高原のオオシラビソ(シラビソ?)の森。
冬には雪と氷に閉ざされる厳寒の志賀高原でさえ、林床の土壌中は上記の通り。もっと温暖で落ち葉なども多い関東平野などの落葉広葉樹林ではもっと多いのではなかろうか?
落葉広葉樹林では1haの森で年間4トンの落葉があるという。落葉という腐食食料が豊かならそれを食べる生き物はそれだけ多くなるはずだ。
それでは、最終的に有機物を無機物に分解(還元)する菌類などの微生物はどのくらいいるか?
これは1㎡などという悠長なオーダーでは数え切れない。乾燥土壌1g中、なんと万から数十万という数だ!という。そのお蔭で最終的には、植物が光合成で無機物を閉じ込めた有機物が、再び無機物に還元される。
もう一つ付け加えれば、菌類は地上にも多くいる。枯れ木などに生えているキノコもすべて「木材腐朽菌」という菌類で、セルロースやリグニンといった高分子化合物を分解するのはこの木材腐朽菌だけだ。このほかに森林土壌中には大気中の窒素を固定してくれる窒素固定菌もいる。
森林では肥料をやらなくても植物が良く育つのは、そのおかげだ。 そしてこれら土中生物はもう一つ偉大な働きを地球上にもたらしてくれる。それは「土壌」を作ってくれる。解っている天体で肥沃な土壌があるのは、地球だけだ。
地球も生まれて30数億年の間、赤茶けた不毛の陸地しかなかった。褐色や黒色の土ができたのは、約5億年前に植物が陸地に上がって、営々、生産者→消費者→分解者→生産者・・・・、の生態系サイクルを回し始めてからだ。なかでも直接的は土壌を作ってきたは上の土壌生物の働きによるところが大きい。土は、鉱物に腐食有機物、分解物が混じってはじめて「土壌」となる。
地球表面に肥沃な土壌があることによってはじめて作物を栽培する農業も成り立つ。
またそれらが作ってくれるふかふかの土壌が雨水を濾し、蓄えてくれるため、川に水が絶えることなく、おいしい水も飲める。
こうした土壌があるのは、先にも言う通り解っている範囲の天体で地球だけだ。そう考えると地中動物や菌類にいくら感謝してもし過ぎるということはない。
目に見える派手なパフォーマンスで目立つポピュリストに目を奪われることなく、縁(落葉)の下の力持ちの働きにもたまには目を向けてやるべきだ。
上のエッセイとは関係ありませんが、昨日の夕富士。