関東では、花の盛りは過ぎましたが、こんな光景を見られた人も多いのではないでしょうか。
風もないのに、花が散る、しかも花びら一枚一枚ではなく、一輪の花がそっくり落ちてくる。
それは、スズメの仕業なのです。
今回は、趣向を変えて、動物の話。スズメも文化を持つという話です。
4月14日 さいたま市・見沼代用水
ところで、「文化」とは何でしょう。
それは、いろいろ定義もあるでしょうが、一つは、「本能」に対する言葉で、「後天的に獲得して継承されるもの」とされます。
多くの動物では、遺伝子にプログラムが刷り込まれていて、その命令どおりに行動します。他の魚がフグを食べないのも、草食動物がトリカブトを食べないのも、遺伝子の命ずる本能によるのです。(「文化」ばかりを肥大化させ、頭でっかちになった人間は、「本能」を失ってしまったがゆえに、フグを食べて死んだり、毒草に中毒したりするのです)
ところが、スズメの桜花落しは、本能ではないといいます。
あるとき、あるスズメが、何かの拍子でか、あるいは他の鳥かなにかのするのを見て真似したのか、花の根元を食いちぎってみたのです。そうするとなんと甘くて美味しいではないか!
それ以来、その新発見スズメは盛んに食いちぎって花蜜を盗み始めました(ミツバチのように花粉の伝播に貢献することなく、ただ蜜を盗むことを「盗蜜」という)。
それを見ていた他のスズメが真似をし始めました。あるいは何らかのコミュニケーション手段で伝えたのかもしれません。こうして全国のスズメが食いちぎるようになりました。
このように経験を記憶し、伝達し、継承していくのを、「文化」といわずして何といえましょう。文化は人間だけが持つものではないのです。
しかし、このスズメの文化も、本来の自然にはないソメイヨシノで春の日本を埋め尽くした日本人の文化が生み出した「文化」なのです。