高山に咲く花々は、なぜか色が鮮やか! その理由をいろいろ考えてきました。
空気が澄んでいるから、同じ色でも色鮮やかに見えるし、写真に撮っても色鮮やか?
それももちろんあると思いますが、本当の理由が解りました。
田中修著『入門 たのしい植物学』(講談社ブルーバックス)を読んで、その理由が腑に落ちました。
アルプス3名花の一つ・
エンチアン 2008年6月 スイス・アルプスにて
コマクサ 2009年7月 本白根山にて
りんどう科の花 2008年6月 スイス・アルプスにて
高山では平地と違って、太陽光も通ってくる空気層が薄いため光線が強く、また自ずから紫外線も強い。この紫外線は生物にとって厄介だ。たとえば人間であれば、シミ、ソバカスなど老化を促し、皮膚がんを起こすなど。そして、その老化やガンを起こす、より根本の理由は紫外線が生物にとって有害な活性酸素を作り出すからだという。この活性酸素は植物にももちろん有害。
動物であれば、物陰に隠れたり、人間であれば傘をさすなど、この紫外線から逃れる方法もあるが、動けない植物ではそうはいかない。
花は、植物にとって子孫を残すための大事な器官、それが紫外線に晒されて、活性酸素を浴びては大変。
さて、一方、花はどうして赤や青や黄色の鮮やかな色を持つ? いうまでもなく花粉を媒介してくれる虫たちを呼び寄せるため、そのためにわざわざ鮮やかな色をつける色素を作り出す。赤や青・紫のためにはアントシアニン、黄色のためにはカロチン。
最近の研究で、これらアントシアニンやカロチンといった色素が活性酸素を無害化する抗酸化作用を持つことが明らかになった。そういえば最近、こうした色素を総称する「フラボノイド」だの「抗酸化作用」だのが、健康関連商品で騒がれるようになった。
もうお解りでしょう。紫外線が強くなればなるほど、色素をたくさん作り、その害から大事な器官を守る。これが、高山の花ほど色鮮やかになる理由だったのです。
オゾン層が破壊されて、紫外線が降りそそぐようになると、平地でも花々が色鮮やかになる? 嬉しいような、怖いような?!